高級賃貸物件の「高級」とは、ただ単に地理的恵まれた場所にあるからではなく、設備が一役買っている。そこで常に名を連ねるのが、侵入者防止システムの一角を担う「オートロック」機能だ。
オートロックは今や大衆的な存在だ。インターフォン一つで入口の開閉が左右され、専用のキーやカードなしには居住者でさえ門前払い。これぞ、近代の城塞のようなものである。
この高度な防御システムのおかげで、悪戯心が芽生えてもドッキリの実行は難航します。管理人からキーやカードを借り、しかも事前にドッキリの日時を通知しなければならない―。まるで魔法使いが呪文を唱える前に予告するようなものだ。
安全とは、現代日本では一定の価格で手に入るサービスである。子育て中の家庭や一人暮らしの女性にとって、オートロック機能付きマンションは城壁の外のドラゴンから保護してくれる騎士のような存在である。
この世は危険で溢れている。『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジも、使徒との戦闘や仲間との交流を経て、閉ざされていた心の扉を少しずつ開いていった。しかしその先に待っていたのは、彼が利用されることを悟った最後の使徒、渚カヲルであった。
カヲルは強固なA.T.フィールド―人間の心の壁を形象化したもの―を持っていた。心の壁は時に守るために必要であり、時に壊すべきもの。それは生き抜くための戦略と言えるだろう。
大都会を生き抜くためには、オートロックという物理的なA.T.フィールドが求められるのである。「家に入れてくれたらOK」などと考えるのは、騎士がドラゴンに勝てると思う程度の甘い錯覚だ。
オートロック付き物件に住むとはつまり、自身の心の壁、A.T.フィールドに挑戦すること。それが現代のサバイバル術とも言えるのかもしれない。