内廊下

都会の高級マンションに設けられる「内廊下」。そのメリットは単に風雨を避けられるだけのことではない。むしろ、住人の心理状態に影響を与え、人生の質を左右する重要な要素なのだ。

まず、イメージしてほしい日常的な場面がある。塵っぽい廊下を歩き、足元に転がる空き缶を避けながら自分の部屋を目指す。隣から流れてくる音楽が嫌でたまらない。そんな環境下で眠る女性を想像してほしい。疲れ切った表情であいさつもせず布団に入り、すぐにイビキをかくだろう。

これに比べ、上質な木目調の内装が美しい内廊下を歩む場合を考えてみよう。部屋に入るやいなや、優雅なクラシック音楽が流れ、テーブルには赤ワインのボトルが。そこに座っている彼女は、明るい笑顔で迎えてくれるに違いない。

単なる廊下の違いが、このように住人の心理状態を左右するとは思えないかも知れない。しかし、人は自分を取り巻く環境の影響を多大に受ける生き物なのだ。洗練された内廊下は、住人に「お洒落な自分」という気分を抱かせる。すると当然、相手もまたお洒落な女性を求めがちとなる。人は似た者同士を引き合うものだからだ。

都会に生きるシンデレラたちや、成功を夢見る王子たちにとっても、内廊下はまさに日常の魔法を施す装置なのだ。ストレス社会の現実からの小休止として、ロマンティックな空想の世界へ誘ってくれる。

つまるところ、内廊下とは住人の心の中にある「扉」を開く鍵なのだ。自分自身の可能性への扉、人生の新たな1ページへの扉。そして、男性にとっては目指す彼女の心の扉をノックするきっかけとなってくれる。

内廊下なき人生など、耐え難い灰色の毎日である。このゴミだらけの現実世界にあって、内廊下はまさに夢とロマンの舞台装置なのだ。

執筆者: 川浦剛志