賃貸住宅Q&A

Q.来年から就職で社会人になります。初めての一人暮らしで不動産屋さんの選び方がわかりません。どのような不動産会社に問い合わせをしたらよいですか?

2021年9月1日

南 智仁

株式会社南総合研究所 代表取締役 南 智仁

不動産会社経営ののち、大手不動産ポータルサイトに入社。 2018年 南総合研究所設立。 おもに不動産会社向けのコンサルタントを行う。(経営戦略、集客支援等) またセミナー講師、各種メディアへの執筆業務も実施。 クライアントは大手不動産会社から、スタートアップ支援まで多数。 業種も売買仲介会社、賃貸管理会社、賃貸仲介会社と多岐に渡る。

お部屋探しをする際の不動産屋の選び方は、とても難しい、というのが正直な感想です

南

おそらくご質問頂いたかたも予想されているように、不動産会社の「良し悪し」は大いにあります。またさらに突っ込んで考えると、選んだ不動産会社のなかでのスタッフの「良し悪し」も関係あります

 そう考えると、「良い不動産会社」の選び方、そしてさらに「良い営業スタッフ」の選び方の2点をクリアしなければいけません。

 では、まず、どのような基準で不動産会社を選べば良いか、少しまとめてみます。



自社サイトに掲載されている物件情報量が多い不動産会社に問い合わせをすることは、正しいのか?

 物件の情報量をたくさん持っている会社を選んだ方が良いか。一見すると、正しく感じるかもしれませんが、実際は、一概にそうとは言い切れません。現在、都心の物件の多くは、「他社付」が可能となっています。とある不動産会社の情報を、別の不動産会社も取り扱いができる、というシステムです。不動産業界に従事されているかたは、理解できますが、意外と一般のかたには、このことは知られてはいません。

 お部屋探しをすると、気付くかもしれませんが、いろいろな不動産会社を回っても、同じ物件を紹介されるケースが多くあります。これは、物件情報が業界内で流通されている証拠です。

 そう考えると、けっして物件情報量を膨大に掲載されている不動産会社のほうが、より多くの物件情報を提供できる、とはなりません

仲介手数料の安い不動産会社を選んだほうが良いか?

 これは、ある部分では、「正しい」とも言えますし、「そうではない」ケースもあります

 不動産仲介会社のなかには、仲介手数料を大幅に安く提案する会社があります。お客さんの経済的なことを考えると、こうした会社を選ぶことは、けっして間違いではありません。

 ただ、手数料の安さだけで、不動産会社を選ぶと、たとえば、「申込時のフォローが遅い」、「入居審査から契約までの連絡が滞る」可能性も否定できません。とにかく手数料が安いだけで、不動産会社を選ぶと、契約時の注意点や契約の案内をしっかりおこなって頂けないケースもあります。この点も注意しておかなければいけません。

 以上のように、一般の方がイメージされる「物件情報量」、「手数料の安さ」を基準に不動産会社を選ぶと、メリットもありますが、デメリットもいくつかあることを忘れてはなりません。

では、どのような基準で選ぶことが良いでしょうか?

 不動産会社が「見える化」されている

 私は職業柄、多くの不動産会社様と仕事をしています。いろいろな不動産会社と接していると、本当にお部屋探しのユーザーを考えて、サービスを提供している会社には、あるひとつの共有点があります。それは、「会社の取り組み、スタッフなどの仕事をオープンに公開しているか否か」という点です。

 たとえば、不動産会社のホームページには、店舗の写真やスタッフの写真がしっかり掲載されている、また不動産会社の経営理念やサービスの内容が明記されているなど、こうした企業活動を透明化されている不動産会社様は、総じてサービスのレベルが高い印象です。たしかに、自分たちの会社の方向性やサービス、スタッフの情報などを明確にしておくと、その会社は、サービスレベルに気を遣うでしょう。

 ここは、ひとつのポイントになり得るかと思います。

 SNSで継続、定期的な更新を行っている

 Twitterでもblogでも良いですが、「SNSを定期的に発信している」ということも、ひとつのポイントとなります。これは、投稿内容というよりも、その不動産会社が、「しっかりルーティンワークを運用されているか」という点を確認することができます。言い換えれば、ひとつのルールを徹底して、実施している会社は、総じて、仲介のサービスレベルが高い傾向にあります。逆に言えば、SNSなどの更新が滞っていたり、放置されていたりする不動産会社は、わりと人の出入り(入退社)が激しい印象があります。

良い不動産会社とは?

 ここで改めてユーザーにとって「良い不動産会社の定義」を改めてまとめてみます。 

  • しっかりとユーザーの立場に立った意見ができるか
  • 連絡応対が滞りなく、返信対応できているか
  • ユーザーの質問内容に、明確な回答ができるか
  • その地域や物件情報に精通し、的確なアドバイスができるか

 上記をしっかりケアできる不動産会社が、まさに良い不動産会社の基準になり得るでしょう。

 しかしながら、これは、どちらかといえば、「不動産会社」というよりは、「営業スタッフ」の質によるところになります。

 では、優秀な営業スタッフをどう選ぶかとなると、これは問い合わせをしてみないとわかりません。残念ながら、不動産会社の良し悪しは、ネット情報やSNSで推測することはできても、その社内で働いてる優秀なエージェントを探すことは、かなり至難の業です。

 しかし、物件の問い合わせ後に確認できるいくつかのポイントがあります。

問い合わせ対応時のチェックポイント

  • 問い合わせ後のレスが早い、丁寧である
  • 質問に対する回答が、わかりやい
  • 無理強いしない
  • 物件のデメリットも伝えている

 またさらに、実際の営業スタッフと会ってみての印象も重要です

  • 清潔感がある
  • 信頼感がある(頼りない空気がない)
  • 曖昧な回答をしない
  • 申込後の流れも、しっかり説明している
  • お客さんの立場に立った提案ができる
  • 明るい

 このあたりがカバーできている営業スタッフだと、大当たりですそのかたにお願いしても問題ないでしょう。

 よく、「地元の不動産会社さんのほうが情報を持っているのではないか」「手数料の安い不動産会社のほうが得だ」「ターミナルにある不動産会社のほうがいろんな場所を提案してもらえる」という意見もありますが、実際のところ、先述したように情報量は、あまり変わりません。それよりも、問い合わせから鍵の引き渡しまで、しっかりと安心できる不動産会社+営業スタッフと出会うことが重要になります。

 また、それと同じぐらい重要なことは、「問い合わせ」を行う前に、「自分の希望条件を明確にしておくこと」です。お部屋探しは、なんとなく探し始めると、キリがなくなります。エリア、予算、希望の設備を自分のなかで、しっかりと整理したうえで、お部屋探しをすることが、より効率的なお部屋探しに繋がります。

 そのうえで、今回、ご紹介した「良い不動産会社」と「良い営業メンバー」に出会えれば、きっと良いお部屋にめぐり会うことができるでしょう。 

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南 智仁

株式会社南総合研究所 代表取締役 南 智仁

不動産会社経営ののち、大手不動産ポータルサイトに入社。 2018年 南総合研究所設立。 おもに不動産会社向けのコンサルタントを行う。(経営戦略、集客支援等) またセミナー講師、各種メディアへの執筆業務も実施。 クライアントは大手不動産会社から、スタートアップ支援まで多数。 業種も売買仲介会社、賃貸管理会社、賃貸仲介会社と多岐に渡る。

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